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脳振盪を徹底ガイド:(1)脳振盪ってなに?

スポーツ現場対応のこと
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まるたく
まるたく

みなさん、こんにちは!

このブログの投稿者のまるたくです!

ぼくは平日クリニックで理学療法士として働きながら、休日はスポーツチームのトレーナー活動を行っています。

今回は複数回に分けて脳振盪というコアなテーマについて書いてみました。



みなさんの中には何らかのスポーツ活動に行っていたり、スタッフとしてスポーツ活動に関わっている方がいるかもしれません。またはお子さんが習い事でスポーツ活動に関わっている方もいるのではないでしょうか。

そんな方々にはお役立ち情報かと思います

それではどうぞ!

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そもそも脳振盪とは?

脳振盪は
外力を受けたことで生じる脳の損傷
またはそれに伴う機能障害全般を指します

ただこれだけでは説明が足りないので
参考文献の情報を足していきたいと思います

Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport-Amsterdam, October 2022 - PubMed
For over two decades, the Concussion in Sport Group has held meetings and developed five international statements on concussion in sport. This 6th statement sum...

昨年オランダのアムステルダムで開催された
第6回国際スポーツ脳振盪会議にて
スポーツ活動中に起こる
脳振盪について定義されたものを紹介します1

スポーツ関連脳震盪とは
スポーツや運動に関連した活動で発生する
頭部、頸部、または身体への直接打撃によって
引き起こされる外傷性脳損傷であり
その結果、脳に衝撃的な力が伝達される

Patricios et al:Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport-Amsterdam, October 2022, BJSM

ここで個人的に
強調したいところとしては

直接頭をぶつけなくても
脳に衝撃が加われば脳振盪は起こりうる
ということです

頭に直接何かがぶつかったとき
普通なら頭の方で
何か問題があったんじゃないかと
思うことはできると思いますが

上記した定義によると
「身体」への直接的な打撃
広く捉えています

これを知っておくだけでも
目の前で何かが起こった時の
自分の頭の中の引き出しが
増えたことになります

問題なのは
このあと記載されている
脳振盪の特徴についてです

脳振盪の理解を
難しくしてしまう理由のひとつに
その症状が多様で
症状の経過も人によって
全く異なることが挙げられます


先ほどと同じ論文の中で述べられている
文章を引用します

症状や徴候はすぐに現れることもあれば
数分から数時間かけて進行することもあり
通常は数日以内に消失するが、長期化することもある

Patricios et al:Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport-Amsterdam, October 2022, BJSM


つまりどんな症状がでるか
またはどのくらいの期間
その症状が続いていくのか

途中で他の症状が出るのかについては
人によってそれぞれということです

この要因として性別や年齢であったり
過去の脳振盪受傷歴や
行っているスポーツの種類
コンディションによる影響など

様々な観点から
調査されている項目がありますが
こちらに関しては
今後整理して投稿していきたいと思います


続きます

脳に衝撃的な力が伝わることで
神経伝達物質と代謝のカスケードが始まり
軸索損傷、血流変化、炎症が
脳に影響を及ぼす可能性がある

Patricios et al:Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport-Amsterdam, October 2022, BJSM

「カスケード」とはフランス語で
「何かが連なっている状態」
「連続して起こっている状態」を意味します

また専門的なところですが
一つの単位で考えた時に
神経の構造は
樹状突起・神経細胞・軸索・神経終末にわかれます

一般的にイラストでは長く1本線が描かれる
いわゆる神経の部分が軸索に相当します

一般的な神経のイメージ

そういったところが傷ついたり
代謝の変化が起こったりと
脳内でさまざまな反応が起こっています

こうした身体の異変に対応すべく
神経活動には多くのエネルギーが
必要になりますから

この過程で受傷した身体の中では
エネルギー不足が引き起こされます

専門的には
Energy Crisis:エネルギー危機
と呼ばれる状態になります2


Giza et al,Neurosurgery,2014より引用改変

”脳振盪”ってどんなイメージ?


先に結論のところで
脳振盪についてお伝えしましたが

これまでみなさんとっては
どんなイメージでしたでしょうか?


もしかしたら
最近の映画やメディアで
耳にしたことがあるかもしれませんね

実は脳振盪は題材として
映画が制作されるほどの
注目を集めるテーマでもあります

Concussion, ピーター・ランデズマン監督,ウィルスミス主演,2015年制作作品

[映画.com] https://eiga.com/movie/83790/

しかしながら
脳振盪に関するイメージや
その取り組みについて

一般の方々の間で
理解が進んでいるとは
言い難いかもしれません

昔のラグビーのドラマで
描かれたように

選手が意識を失いながらも
やかんの水をぶっかけことで復活を果たし
プレーを続けるといったシーンを
見たことがあるかもしれません笑

日常生活においても
子供が遊んで転んだ後に
「大したことないだろう」と
何も確認せずに
放っておいたことはありませんか?

何も知らない人にとって
頭をぶつけていなければ大丈夫、と
思ってしまいますよね


その一方で
脳振盪に関する誤解も存在します

受傷した直後の様子が
顕著な症状だったことなどあり
もしくは回復に少し時間がかかったことで
コーチングスタッフが
その選手に対して過保護になりすぎてしまい
過剰な安静やプレー復帰を認めない
対応をされる場面も見てきました

今後投稿していきますが
その対応が最善とも限らないのです

なぜ脳振盪のことは知っておく必要があるのか?

このことについては
以下の3点が挙げられると思っています

脳振盪のことを知っておくべき3つの理由
  • 脳振盪以外の重篤な頭頸部外傷発症のリスクが潜んでいる(発症した直後にはわからない)
  • 脳振盪症状は発症後から長期にわたって継続する場合があるから
  • 脳振盪発症をきっかけに、他の障害が出るリスクが上がるから

一つずつ見ていきましょう

  • 脳振盪以外の重篤な頭頸部外傷発症のリスクが潜んでいる(発症した直後にはわからない)

目の前で人と人が
もしくは人が転倒して
床とぶつかった時を想像してみてください

一時的に意識を失っていても
そうでなくても
むくっと疑わしいその人が
起き上がったとします

心配で駆けつけたあなたは
「大丈夫ですか?」と問いかけますが
きっとぶつかったり転んだ当事者は
こう答えるでしょう

「大丈夫、大丈夫」

こういう時の大丈夫という言葉ほど
不安なことはないですね

残念ながら本当に
大丈夫かどうかは
このやりとりだけではわかりません

自覚症状がまだ乏しいだけで
脳振盪を起こしているかもしれませんし

当たりどころがわるくて
もっと重篤な(命の危険のある)頭部外傷を
もたらしているかもしれません

代表的なところで言えば
脳内出血(硬膜外・硬膜下・くも膜下など)です

症状によっては
重篤なケースでも
そのときは何事もなくても
1-2日経過してから徐々に
頭痛やめまい、ふらつきの症状が
出現して悪化するケースもあります3

脳振盪の症状でも
重篤な頭頸部外傷と
同様の症状がでることもlあります

だからこそ難しいんですね

  • 脳振盪症状は発症後から長期にわたって継続する場合があるから

脳振盪が引き起こす危険
というものがあります

一度脳振盪を発症すると
回復には一定の時間がかかる
可能性があるということです

一般的には7-10日ほどで
症状が減少していくことが言われていますが

もちろん個人差があります

複数回の脳振盪経験をしている人では
症状の持続期間が増加するという
報告もあります4

性別差や年齢によっても
一度の受傷で持続する
リスクの高いグループが
存在するとも言われています

一定の期間を超えて
長期間継続する場合もあります

これらは
脳振盪後症候群(Post Concussion Syndrome)
と言われおり、スポーツ活動だけでなく
日常生活や学校・社会生活にも
影響を及ぼすような病態になることもあります

脳振盪後症候群については
改めて取り上げていきたいと思います

  • 脳振盪発症をきっかけに、他の障害が出るリスクが上がるから

脳振盪発症後に
他のケガの発症リスクを高める
可能性もあります

報告があるものでいくと
スポーツ活動では
リハビリ期間も含めて
長期離脱が余儀なくされる
「膝前十字靭帯損傷」のリスクが高まったり5

一般的に足関節捻挫と言われる
「足関節外側靭帯損傷」発症との
関係性があると言われています6

さらに
長期間にわたって
脳の機能に影響を及ぼすこともあるのです
注意力の低下や認知機能の障害7
人格変化などが起こる可能性があります

こうしたリスクを孕んでいるからこそ
脳振盪のことを知っておく
必要があると思いますし

病状のことや回復までのことを
しっていくことは大切なのだと思います

どういう場面で起こるのか?

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: bmx-1206367_1280-1024x768.jpg

脳振盪は
日常生活からスポーツまで
さまざまな場面で発生します

国立スポーツ科学センター所属の奥脇透先生
早稲田大学スポーツ科学学術院所属の鳥居俊先生
東邦大学医療センター大橋病院 所属の中山 晴雄先生
という錚々たる先生方監修の元

定期的に勉強会や
脳振盪に関する啓蒙活動をしてくださる
国立スポーツ科学センターの大伴茉奈さんが作成された
「脳振盪ハンドブック」というものがあります

https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/images/NewNoushintou/Noushintou-handbook.pdf

大友茉菜,脳振盪ハンドブック,編集ファンメディケーション株式会社

こちらのイラストをみると
とてもわかりやすいと思います

転倒や自動車事故などの
自分が当事者として起こる状況から
子供のスポーツの応援中に
ボールにぶつかるなどの場合も考えられます

特にスポーツ活動の場面では
相手選手との衝突や
接触が原因となることが多いです

なのでスポーツ種目で考えると
アメリカンフットボールやラグビー
サッカー、アイスホッケーなど
接触が多いスポーツでの
発症率が高いとされています


いよいよ私も無関係ではないな
と思う人もいるのではないでしょうか?
日常の場面まで考えると
全然遭遇することはありえるんですね

なので身近な誰かの役に立つ
という視点でこれからの投稿を見て頂けると
より有意義なものになるのではないかと思います

まとめ

最後に今回のテーマをまとめてます

脳振盪は外力が加わったことで生じる
脳の損傷であり、機能障害である

頭をぶつけていなくても脳振盪になる可能性がある!

目の前でぶつかったシーンを見ただけでは
脳振盪かどうかはわからない!

スポーツ活動だけでなく、普段の生活の場面でも
脳振盪は起こる可能性がある!

今回は以上です
次回は脳振盪の
具体的な症状について
詳しく紹介していきます

脳振盪という問題について
正しく理解し、適切な知識を持つことが
自身や周囲の人々の安全を守るために大切です

まるたく
まるたく

最後までブログを見て頂きありがとうございました!

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引用文献

  1. Patricios et al:Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport–Amsterdam, October 2022,BJSM,695-711,2023.1 ↩︎
  2. Giza et al:The New Neurometabolic Cascade of Concussion,Neurosurgery. 75(0 4),S24–S33,2014. ↩︎
  3. 日本臨床スポーツ医学会 学術委員会 脳神経外科部会:頭部外傷10ヵ条の提言 第2版 2015 ↩︎
  4. Guskiewicz et al,: Cumulative Effects Associated With Recurrent Concussion in Collegiate Football Players The NCAA Concussion Study 2003 JAMA ↩︎
  5. McPherson et al,:Effect of a concussion on anterior cruciate ligament injury risk in a general population, Sports Med.,2020 ↩︎
  6. Gilbert et al,:Association Between Concussion and Lower Extremity Injuries in Collegiate Athletes,Sports Health,2016 ↩︎
  7. Covassin & Elbon: The cognitive effects and decrements following concussion, J Sports Med, 2010 ↩︎