みなさん、こんにちは!
このブログの投稿者のまるたくです!
今回はスポーツ現場で
活動する上で欠かせない知識である
脳振盪の理解を深める第2弾になります👏
前回の投稿を見ていない人がいたら
こちらの投稿を見る前に閲覧しておくと
より理解が深まると思うので
お時間がある方はぜひ見てください
前回の投稿では
脳振盪とはそもそもなんなのか?
脳振盪になることが
どれほど重大な問題があるか
脳振盪自体が
どんな時に生じるかを
解説していきましたね
今回は脳振盪には
具体的にどういった症状があるのか
ということについて、詳しく
説明していきたいと思います
それではどうぞ!!
脳振盪の症状はどんなものがあるのか?
脳振盪の症状は一つではなく
多種多様・十人十色です
脳振盪研究において有名な
Collinsらが2014年に
発表したイラストがあるので
そちらを紹介させて頂きます1
脳振盪は
外力を受けたことで生じる
脳の損傷なので
脳の機能障害によって
臨床症状が起こるわけです
イラストにすると
上にあげたような症状が
出現する可能性があります
これを初めて
見る人にとっては
脳振盪って症状めちゃめちゃあるんだな
と思った方が多いと思います
脳の機能障害なので
負担がかかった場所や
神経の損傷の回復程度によっても
出てくる症状もそれだけ異なる
ということなのかもしれません
通常の神経画像検査上
特別な所見が出ないのが
脳振盪の特徴の一つでもあるので
現在も脳の機能局在と
症状との関連は
はっきりとわかってはいません
それにしても多すぎますね💦
著者のCollinsらも
これだけ脳振盪の症状は多様なのだから
脳振盪の対応は一律化するのではなく
個別の症状に合ったアプローチが
必要という話を展開していきます
脳振盪の個別アプローチ方法については
今後フォーカスして投稿していきたいと思いますので
楽しみにしていてください
ここまで多い脳振盪症状
分割して考えたり
整理する方法(サブタイプ/サブグループ化)が
いくつか存在しています
その中でも
個人的にしっくりきたものをひとつ
Langdon先生が
2023年に発表された論文で
脳振盪の症状を
5項目にサブタイプ化しています
わかりやすかったので
これを引用しながら
説明していきたいと思います2
ひとつずつみていきましょう
片頭痛症状
片頭痛症状とは
以下の項目として分類されます
脳振盪発生時の
神経生理学的なメカニズムは
まだはっきりしていないことも多いですが
前回の投稿の中で
軸索の損傷や炎症
膜の透過性が亢進して
神経伝達の抑制が効かない
状態になる話をしたと思います
神経伝達の抑制が効かないということは
外部環境からの刺激にも
過剰に反応してしまう
可能性が考えられますよね
例えば音のような聴覚刺激にも
光のような視覚的にも
感受性が増すことがあります
ぼくが関わった選手にも
脳振盪を発症した後
復帰まで練習から外れていた選手が
グラウンドに顔を出すと
頭痛や不快感が強くあると
言っていた人がいました
彼は光(日差し)と
音(選手の練習中の声など)に対して
過敏だったようなので
普段の練習は
チームのクラブハウス内で
過ごすことが多かったです
こうしたものが片頭痛症状にあたります
神経認知症状
そもそも認知とはなにか?
というのが気になる人が
いるのではないでしょうか?
認知とは3
五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)+αで
情報収集や処理・判断する過程のこと
※+α:前庭感覚(バランス感覚)+固有受容覚(動かす手足の感覚)
を指します
なので認知機能が低下する症状は
情報処理が遅れたり
途切れたりするような症状が
挙げられています
神経認知症状は
以下の項目として分類されます
片頭痛症状でも
記載した記憶障害
受傷直後に
自分がどういうプレーで脳振盪になったのか
全く覚えていない人が一定数います
他にも
試合終了後のロッカールームで
着替えることもしないで
ぼーっとしている人にも
出会ったことがありました
いくらこちらが質問しても
反応がワンテンポ遅かったり
何回か質問しないと
適切な反応をくれない
ケースなんかもありましたね
付き添いをつけて
ベタ付きで
そのまま救急病院に送ったケースでした
こうしたものが
神経認知症状にあたります
疲労症状
疲労症状は
以下の項目として分類されます
眠気の症状を
発症直後や数日経過しても
継続して訴えてくるケースは
個人的には多い印象ではあります
前回の投稿で
述べたところで言うと
受傷後の脳は
需要の供給のバランスが崩れている
「エネルギー危機:energy crisis」
の状態になっているので
エネルギーがなければ
覇気も失いますし
疲労感が出てきても
不思議ではないというのは
直感的に理解できますよね
普段元気だったひとなら
なおさら
なんだかいつもと違うなぁとか
なんか変だなぁと
思っても自然だと思いますね
前庭-眼球症状
前庭-眼球症状は
以下の項目として分類されます
前庭系や眼球運動の症状は
臨床の中では
多く遭遇することがあります
受傷直後で言えば
立位のバランスが保てなかったり
歩行中ふらふら歩いたりします
自分の視界がグラグラとか
ぐあんぐあん揺れていると
表現する選手も多いです
また前庭系由来で
これらの症状を考えると
すばやくゆれたり
回転したりする刺激は
延髄に存在する嘔吐中枢に
過剰な刺激を与えることもあり
結果として
吐き気や嘔吐が
起きることもあります
気分関連(感情的)症状
気分関連(感情的)症状は
以下の項目として分類されます
普段はとても
穏やかな選手だし
受け答えにも
冷静に対応してくれる人が
受傷後やけに
攻撃的になったり
まわりに当たり散らかしたりする
姿をみたことがあります
もしくは
興奮気味に饒舌になったりしたり
そうしたケースは
受傷後の選手で見たケースがあります
試合終了後に
自分の荷物の場所がどこにやったとか
ここからの帰り道どうすればいいか
何度も何度も心配気味に
確認してきたりする人も見たことあります
普段から接していないと
これが正常なのか
脳振盪による影響なのかというと
判断が難しいところですが…💦
脳振盪の症状を
こうした5つに
分類したわけなのですが
重複しますが
それでも脳振盪の症状は多彩です
一つが単独で発生することは
ほとんどなく
重複する形で生じます
症状の程度も個人差があり
持続期間は異なりますから
みなさんの周りで遭遇した際には
十分に観察して
対応する必要があるということは
なんとなくでも
イメージできたのではないでしょうか?
脳振盪の中でも最も多い症状は何か?
こうした多彩の症状のうち
最も多い症状はあるのでしょうか?
結論から言うと
脳振盪の中でも
最も多い症状は、頭痛です
2008〜2009年度の期間で高校生アスリート(競技スポーツ:サッカー、バスケットボール、レスリング、野球、バレーボール、ソフトボール)を対象とした傷病管理システムの用いた調査によると4
脳振盪を
発症した人(総件数:544件)のうち
93.4%が頭痛を訴えていたと
報告しています
他には
めまいや不安感、集中力低下などが
多いとこの論文では報告されています
また受傷後1週間以内は
認知ー疲労ー片頭痛症状が優位になることも
別の研究で報告があることから5
頭痛症状や
疲労感
集中力低下や記憶障害などは
発症後に
起こりやすいと
考えていいと思います
発症してからどのくらいの期間継続するのか?
脳振盪の症状は
一般的には数日から
数週間で改善することが多いです
過去の国際スポーツ関連脳振盪会議においても
臨床的には7-10日ほどで
80〜90%の症例で回復すると
述べていました6
しかしここに関しての
裏付ける研究報告はほとんど見られず
いずれも臨床で日々対応している方々の
意見と言えると思います
スポーツ関連脳振盪の患者66名(平均16.5±1.9歳、範囲:14〜23歳)を対象に行った疫学調査では7
神経認知・前庭眼球障害をもとに
臨床的に回復したことを
専門家により定義してもらい
その回復期間を被験者間で比較しました
結果として
ほとんどの患者で
臨床的回復をした期間は
脳振盪発症後から21〜28日である
という報告でした
自覚症状だけで回復した
と決めていることも
研究の限界なところがあると思いますが
回復期間が長く報告される例も
あるということですね
最近では
脳振盪発症者のバックグラウンドが異なることで
症状の継続期間は
個人差があることがわかってきており
それによって
症状の持続期間がより増加する場合も
しばしばあります
まとめ
最後に今回の投稿をまとめます
脳振盪の症状は多彩で異なる症状を引き起こす
可能性があるがもっとも多い症状は頭痛である
脳振盪症状をいくつかの
サブグループに分けて考えると整理しやすい
(例)
片頭痛症状、神経認知症状、疲労症状
前庭眼球症状、気分関連症状
脳振盪症状は基本的には数日〜数週間かかるケースが多いが
個人の特性に応じて症状が長期化する可能性が高い
次回はどういった人が
脳振盪になりやすいのか?という
脳振盪発症に関わる
個人の特性(リスク因子)について
紹介していきたいと思います
今回はここまでです!
最後までブログを見て頂きありがとうございました!
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引用文献
- Collins et al: A comprehensive, targeted approach to the clinical care of athletes following sport-related concussion. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc,2014. ↩︎
- Landon et al: Heterogeneity of persisting symptoms after sport-related concussion (SRC): exploring symptom subtypes and patient subgroups,J Neurol,270(3),1512-23,2023. ↩︎
- 認知機能とは:認知機能の見える化プロジェクト,availed at https://cogniscale.jp/function/ ↩︎
- Meehan et al:High school concussion in the 2008-2009 academic year: mechanism, symptoms, and management.AJSM,2010. ↩︎
- Kontos et al: A revised factor structure for the post concussion symptom scale (PCSS): baseline and post-concussion factors,AJSM,40(10),2375–84,2012. ↩︎
- McCrory et al:Consensus statement on concussion in sport: the 4th International Conference on Concussion in Sport held in Zurich, November,BJSM,47(5),350-8,2012. ↩︎
- Henry et al:Examining Recovery Trajectories After Sport-Related Concussion With a Multimodal Clinical Assessment Approach,Neurosurgery,78(2),232-41,2016. ↩︎