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脳振盪を徹底ガイド:(5)脳振盪と血圧・脳血流量について

スポーツ現場対応のこと
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まるたく
まるたく

みなさん、こんにちは!

このブログの投稿者のまるたくです!

今回はスポーツ現場で活動する上で欠かせない知識である脳振盪の理解を深める第5弾になります。

前回の投稿を見ていない人がいたら、理解が深まると思うので

お時間のある方はぜひ見てください!

それではどうぞ!!

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脳振盪と血圧・脳血流量との関係性はあるのか?

脳振盪を受傷した時、脳の中では何が起こっているのでしょうか?

その一つの回答を出す時に、正常な脳が保有している

血管の自動調節機能を把握することが近道になると思います

そこで最初にこの脳の血管自動調節機能(vascular autoregulation of the brain)について紹介していきます

脳血管の自動調節機能:脳の酸素供給を守るメカニズム

脳は最も重要な器官の一つであり

その正常な機能を維持するためには安定した酸素供給が不可欠です

しかし全身の血圧が低下すると、脳の酸素供給に影響を及ぼす可能性があります

全身の血圧が低下する、脳の酸素供給が減少し

相対的に動脈内の二酸化炭素濃度が上昇します

しかし脳は自己を守るために、最小限の変動で継続的な酸素供給を確保する反応をします

具体的に言うと

動脈血中の二酸化炭素濃度が上昇すると、脳血管が拡張し脳への血流を増加させます

これにより酸素供給が確保され、脳は安定性を維持します

この特性によって、脳は全身血圧の変動から自己を守っているのです

これらのメカニズムは自律神経系によって支えられています

自律神経系は私たちの意識に上らない中で、生理機能を調整します

特に体温、循環、呼吸、消化、排泄、生殖などを管理しています

脳血流量は動脈血二酸化炭素濃度に正比例するようにして

自律神経系の働きによって血管を操作し、血流の調節に関与しています

脳振盪と血圧・脳血流量の関係について

脳振盪を含む軽度外傷性脳損傷後の患者では

脳の自己調整性血管反応が損なわれる可能性があります

脳振盪後に心血管自律神経系機能が影響を受けて、動脈の圧受容器感度が低下する報告があります1

つまり脳振盪後の患者は運動負荷に応じて

血圧のコントロールがうまくできないため、過剰な血管収縮により脳血流量を上昇させます

他の実験の中でも、運動中動脈内が所定の二酸化炭素レベルに到達しても

脳振盪後の患者は必要なほど呼吸をしていなかった

つまり運動中は体内の状態を察知する圧センサーが反応しなかったことで

運動強度に応じて動脈血の二酸化炭素濃度が有意に上昇し2

相対的に低換気を引き起こしていたということになります

また別の研究の中では、11人のレクレベルのアスリートと脳振盪患者12名を対象に

強制呼吸・立位、バルサルバ自律神経検査(いきむ)での

心拍数、血圧(収縮期・拡張期)を調査しました3
※脳振盪患者は受傷後48時間以内、そこから24時間後、受傷後1週間後、受傷後2週間後に測定を実施

その結果、脳震盪を起こしたアスリートは

受傷後48時間以内の安静時収縮時血圧が著しく高く

立位での収縮期血圧の反応が大きく

脳振盪受傷後48 時間以内では、バルサルバ検査から収縮期血圧が正常に戻るまでに時間を要しました

また脳血流量の研究では

脳震盪を起こした選手18名と脳震盪未経験のサッカー選手19名のコントロール群に

症状の評価ツールと動脈スピンラベリング (ASL) 磁気共鳴画像法 (MRI) を用いて

受傷後24時間以内と受傷後8日目に脳血流を測定する実験を行いました4

結果としてはコントロール群と脳振盪群間での同時期の有意な違いは認められなかったが

コントロール群と比較して、脳振盪発症群は

受傷後24時間のときよりも受傷後8日後の脳血流量の有意な減少が認められたと報告しています

左が受傷後24時間以内の画像、右側(受傷8日後)では血流量の減少が薄い青色として示されている
Wang et al,J Neurotrauma.2016より引用

しかし、検討する年齢によって

脳振盪受傷直後の脳血流量の反応(直後は減っていたり、上昇していたり)は

異なっている報告が散見されており5

やはり脳の血管自動調整の能力を維持することが重要性ではないかという話になっています

つまり二酸化炭素濃度を検知する感受性こそが

脳血流量の調節において重要な役割を果たしているということで考えがまとまってきています

まとめ

最後に今回の投稿をまとめます。

脳には血流を一定に保つために、血管自動調節機能が備わっている

脳振盪発症後は動脈内にある二酸化炭素濃度を感知するセンサーが機能不全に陥る

センサーの機能不全により、体内の二酸化炭素濃度が上昇して
それに伴って脳血流量が過剰に増加する

次回は具体的にどのような評価を持って脳振盪と判断していくべきなのか?

急性期・サイドライン上での評価をテーマに紹介していきたいと思います

今回はここまでです!

まるたく
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最後までブログを見て頂きありがとうございました!

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引用文献

  1. Fountaine et al:Attenuation of Spontaneous Baroreceptor Sensitivity after Concussion,Med Sci Sports Exerc,51(4),792-97,2019. ↩︎
  2. Leddy et al:Active Recovery from Concussion,Curr Opin Neurol,31(6),681-86,2018. ↩︎
  3. Dovson et al:Sport-related concussion induces transient cardiovascular autonomic dysfunction,Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol,312(4),575-84,2017. ↩︎
  4. Wang et al:Cerebral Blood Flow Alterations in Acute Sport-Related Concussion,J Neurotrauma,33(13),1227-36,2016. ↩︎
  5. Len et al:Cerebrovascular pathophysiology following mild traumatic brain injury, Clin Physiol Funct Imaging,31(2),85-93,2011. ↩︎